新しい連携の取り組みへの挑戦
みらい創造財団朝日のあたる家で、新たな産福連携の一環として、工業と福祉の連携「工福連携」の取り組みがスタートしました。
きっかけは、地域の縫製会社から奥州市で、ふとんカバー縫製や羽毛ふとん製造などの事業をおこなう「株式会社 ファクトリー奥州」を紹介していただいたことからでした。
縫製業界の現状として、中国や海外へのアウトソーシングが多かった時代と比べて、原油高、資材や運輸の高騰などの影響から、
国内受注の動きが増えてきています。
一年を通して大中小と様々な仕事があるのに対して、人手不足でなかなか担い手が見つからないという課題がありました。
そこでコーディネーターが提案したのが、福祉分野との連携です。
連携を依頼した際に、返ってきたのは、「福祉とのきっかけはなかったが、連携の仕方があれば模索したい」との前向きなお返事でした。
縫製のお仕事として、工程をいくつにも分けることができるので、連携先の施設利用者の方が、多く携わることができます。
次に、福祉サイドへもヒアリングを行ったところ、
「施設への工業用ミシンなどの設備導入の面でハードルが高い」「縫製技術の習得に時間がかかりそう」「納期や数量へ対応できるかが心配」など、様々な課題や不安な声が上がりました。
ミシンでの作業が主となる縫製の作業は、ハードルが高いというイメージも強く、施設の職業指導員としても、技術の習得が難しいのではと感じてしまうほどでした。
頭で考えてしまうと、難しい方向やできないかもしれない……と捉えてしまうところを、
コーディネーターから、「連携を模索するうえでも企業さんと連携してみて、まずはそこの解決を考えてみましょう」との後押しもあり、
動きだしを決意しました。
不安を取り除くためのサポート体制
まずは、施設側が抱える不安を解消するための方法として、縫製会社側からは、設備導入の面に関して、
ファクトリー奥州のご厚意で、工業用ミシンや練習用布の無償での貸し出し。
さらに、工業用ミシンの使い方のレクチャーとして、技術指導者の派遣も行いました。
地域の就労継続支援B型の事業所へ、縫製説明会を計3回。
その中で受託検討いただく事業所へは、2ヶ月~計20回の工業用ミシンの講習会を朝日のあたる家で実施しました。
ミシンの使い方や糸のセッティングの説明、職業用と工業用のミシンの違いを体験したり、
抑え方や手運びのやり方や、直線を何度も縫う練習を重ねていきました。
最初は、布団カバー1枚を縫うのに2時間かかっていた参加者の方々も、縫い方の要領を得るごとに、
作業時間が1時間、そして30分と早まっていきました。
これからの可能性へ期待を膨らませて
講習会を経て、指導者の方からも合格をいただき、受託が決まった事業所は、就労継続支援B型事業所のポプラと釜石まごころ就労支援センターの2事業所。
実際に使用する工業用ミシンは、ファクトリー奥州と朝日のあたる家から、貸し出しを行い、受託がスタートしました。
受託した事業所では、縫製部屋をつくり環境を整えたり、効率よく作業ができるような工夫も見られました。
作業をする利用者さんからは、「疲れたけど、仕事をしているという感覚で、達成感、充実感がある」や、「手に職がついた感じで、自信が持てて嬉しい」
という声が届いています。
縫製連携では、主に布団カバーの中部屋縫いやクッション縫いなど、B型事業所へ支払われた委託額は、
現在までで約40万円の実績となっています。
現在も朝日のあたる家では、工業用ミシンを使って受託に向けた練習会や、説明会を開催しています。
まだまだ、多くの可能性を秘めた工福連携。今後の動きにも注目です。
文:吉田ルミ子