陸前高田市竹駒町で先祖代々、農業をいとなむ軍見洞(ぐんみぼら)農園は、
米やきゅうり、なすなど、さまざまな季節野菜を生産しています。
軍見洞農園の佐々木輝昭(ささきてるあき)さんに、農家としての「はじまり」と「これから」についてお話を伺いました。
佐々木さんは県内の農業短大を卒業し、県の就農教育制度を活用し農業を実践的に学んだのち、22歳で実家の農業を継ぎました。
「軍見洞農園」という名前は、実家の屋号である「軍見洞」にちなんだもので、佐々木さんが継いだ際に、命名したもの。
38歳にして農業歴は16年と、地域のなかではベテランの若手農家です。
就農時の農業仲間はゼロだった
「私が農業に入ったときは、ずっと年上の農家さんばかりで、同世代の農家さんはいませんでした。
農業をはじめて2、3年たったとき、市内の同い年の友達が仕事を辞めてUターンをして彼の実家の農業をはじめました。
やっと仕事のことを話せる仲間ができたって、とても心強かったですね。
震災後、同世代の農家さんが増えてきたので、もっと心強くなりましたね。それに、すごく熱い人が多くて。
相談をすると、すごい熱い言葉で返って来るんですよ!
それがいい刺激になっていて、みんなが頑張っているのを見て、私も新しい野菜に挑戦してみよう!って前向きに考えることができます」
これからもさまざまな旬の野菜を、多くのお客さんに届けていきたい。
そんな農業一筋の佐々木さんには、農業に興味をもつ人が相談しにくることも多いのだそう。
農業に興味があるなら、なんでも相談してもらえたら、と話します。
ひとつずつ積み重ねてきた実績
これまでの実績や経験など、多くを語る佐々木さんではありませんが、品質の高さは確かなものです。
手間暇かけてつくられた野菜や、ふるさと納税の返礼品として出品されているお米など、
良質の作物が多くの方から好評を得ています。
また、佐々木さんは地域農業の発展に意欲的に取り組んでいる優れた農業者「青年農業士」として、岩手県知事から認定されています。
地域の農業をになう、青年のリーダーであり、やさしくおだやかな人柄からも、多くの農業者に頼られる存在です。
陸前高田のりんご農家「イドバダアップル」の吉田司さんは
『彼はこの地域の農業に、なくてはならない存在』と話すほど信頼も厚い佐々木さんです。
今までの経験を未来の農業のために
新規就農者には移住者が多いため、陸前高田の風土をよく知り、さまざまな農作物を育てた知見をもつ佐々木さんのもとへ
相談に訪れる人も多いのだそうです。
また、高齢になったことで農業を引退した人からは『空き農地を誰かに使ってほしい』そんな相談がくることも多いのだそう。
「自分の農業スタイルとしては、ひとつの作物をつくるというよりは、広くいろんなものをつくりたいと思っています。
もし誰かに『こういう時はどうすればいい?』とか聞かれたら『私がやったときは、こうだったよ』って、専門家、研究者ではないけど、
体験談としてちょっとしたアドバイスは、できるかなと思います。」
「陸前高田は気候もおだやかなので、農業をするにはいいところです。
季節ごとに、うまく回転させながらいろんな野菜がつくれるので、やってみたい意欲のある方のチャレンジを応援してあげたいですね。
相談してもらえれば、わかる範囲で空き農地を紹介したり、つくり方を教えることで、
これからの農業に自分の経験をつないでいければと思います!」
これまで積み重ねてきた経験を次の世代の糧へー。
ひとつの種から、たくさんの実がなるように陸前高田の農業は、広がり、つながり続けていくのだと思いました。
取材・文:板林恵